意外な事実 vol.36 ~においに引き寄せられて~

作/チームCOL

「くらはし、はっちゃーん」


部屋の中から声がして、
ママといっしょに
おそるおそる診察室へ入る。


ほんとに検診だけ?
ボクは、ちょっと疑うように
まわりをうかがう。


クン……。


あれ?
かすかに香るにおい。


このにおいは、もしかして……
ウィル君!?

耳をピンと立てて、
ウィル君の気配に集中。


部屋の中をクンクンクンクン
嗅いでみる。


先生は、そんなボクをひょいと
診察台の上に乗せた。


「そうそう。きょう、午前中まで
 ウィル君がいたんですよ。
 はっちゃん、仲良しだから、
 においですぐに分かったんだね」


やっぱり! 
ウィル君のにおいが

すると思ったんだー。


ママも、すかさず反応する。


「え、ウィル君が?」

「ちょっとお腹の調子がね。
 一週間ほど入院してたんですけど、
 きょう退院して帰ったんですよ」


え?
入院!?


なかなか会えないな~って
思ってたけど、入院してたなんて
知らなかった。


前にもお腹こわしてたけど、
ウィル君、だいじょうぶかなぁ。


一週間も、パパと離ればなれで
ここにいたのか……。

ひとりで心細かっただろうな。
さみしかっただろうな。


ウィル君と、またいっしょに
グラウンドで遊びたい。
はやく、ウィル君に会いたいよー。


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