3月11日、あれから5年。
From 倉橋 燿子
毎年この日が来ると、東日本大震災のことと共に、
決まってあの時のことも思い出してしまう。
2011年3月11日、ちょうどパセリ伝説の姉妹編
『ラ・メール星物語 ラテラの樹』の物語構成について、
スタッフと話し合っていた時だった。
2:46。マンションの10階で、ガタっと揺れが起こった。
その瞬間、前日に届いたばかりの新品の大型テレビが心配になり、
何よりも先に「テレビが!」と声をあげてしまった。
スタッフみんなも新品のテレビが気になっていたらしく、
見ると、すでにテレビに駆け寄って、抱きかかえるようにして支えてくれていた。
しばらくして、ダンナさまからの電話があったが、開口一番「テレビは?」
こんな時なのに、うちの家族が一番心配していたのが、「テレビ!」って…。
その後は、皆でNHKの地震速報を伝えるアナウンサーの声を、
一言も漏らしてはいけないという気概で、真剣に聞き入っていた。
まさかこの後、東北沿岸に大津波が襲い、あんなことになるとは思いもよらず…。
あれから5年。
もう5年経ってしまったんだと早いような気もするけど、
その後、ずいぶん様々なことがあって、
この大震災をきっかけに、出会えなかったはずの人たちと出会えたり、
大きく人生が変わった人もたくさん見てきた。
例えば、震災後すぐに東北へボランティアに行ってみたら、
自分ができることは歌だけだからと、頻繁に東北に足を運び、歌を歌い続ける若者。
自分にも何かできるのではないかと、自分の地元と被災地をつなげ、
様々なコラボイベントを企画し、被災地を盛り上げている人。
全国から有志で集めた絵本を、被災地の小学校や図書館を歩きまわり、
子ども達に少しでも元気をと、絵本を置いて歩いていた人。
被災した動物たちを保護するために、何度も被災地へと駆け回り、
弱った動物たちを引き取り、里親を探し、動物たちの命を助けた人。
その人たちが皆、口を揃えていうのは、
「被災地に行ったら、逆に自分たちが元気づけられた」
という言葉だった。
私も、福島、宮城、岩手に足を運んだけれど、
被災地の人たちに元気をもらうというのは、本当だと痛感した。
あんなに辛いことがあったというのに、
皆で支え合って、どうにかしなきゃとがんばっている。
被災した知人は、以前よりも増して故郷を大切に想う気持ちが強くなり、
被災地を元気づけようと立ち上がった若者達を応援するために、
元気パワーをみなぎらせていた。
被災した人たちの中には、まだまだ元の生活に戻れない方々が数え切れないほど大勢いる。
行方不明者も、未だに二千人以上・・・。
その悲しみは、言葉には言い表せない、計り知れないものだろうけれど、
被災された方の姿からは、その悲しみをバネにした、
人間のたくましさとか、元気さとか、そういうものを感じた。
これが、人間の本当の力なのかもしれない。
今まで30年以上作品を書いてきて、
いつも作品の中に込めたいと思っていることは、
「人は、試練によって成長し強くなるということ」
「今は分からなくても、その力は、必ず誰の中にもあるということ」
被災地には、まさにこれを実践している方々が大勢いて、
わたし自身、ものすごいパワーをいただいた。
大勢の人の底力が合わさったら、どれだけの力になるだろう。
日本がこれから、本当の意味で元気になることを祈って、
これからの5年、10年・・・、作品をとおして、
わたしはわたしの底力を出していきたい。
皆さんもいっしょに、“底力“、出していきましょうね。
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