ハチのお出迎え
From 倉橋燿子
ピンポーンとチャイムが鳴ると、
1月で11歳になった柴犬ハチが、
「アゥ〜〜、アゥ〜〜〜〜」としきりに高い声を出し、
仕事部屋のパソコンの前に座っている私を呼びに来る。
青い鳥編集部のTさんが、打ち合わせにやって来られたのだ。
Tさんが自宅マンションの下でチャイムを鳴らすだけで、
ハチは、なぜだかすぐに察知して、
まだTさんの姿を見ていないのに、喜びを顕わにする。
いつもはまったく吠えない大人しいハチが、
毎朝夕のオヤツのおねだりの時以外で、
こんな甘えた声をだすのは、Tさんが来られた時だけだ。
玄関のドアを開け、Tさんが入ってくると、
ハチは耳をぺったりと寝かせて、床に体がつきそうな格好で、
しきりに足をばたつかせる。
「アゥ~~、アゥ~~」バタバタバタ。
もう大興奮だ。
喜びを体全体で表わし、玄関からリビングへとTさんを先導する。
Tさんが椅子に座ると、今度はちょうど手の届くところに
自分の首の位置を合わせて、そっと寄りそう。
撫でてもらおうという作戦らしい。
ひとしきり撫でてもらい、わたしとTさんが仕事の話を始めると、
安心したように、ふっといなくなる。
Tさんとの打ち合わせは、
このような和やかなムードで始まるのが常だ。
Tさんは、編集部に届いた読者からのファンレターを渡してくださったり、
先日新刊発売に向けてサイン色紙を描いた書店先から、
お礼のメールを頂いたなどの報告をしてくださった。
私の故郷でもある広島の書店さんが、サイン色紙を飾って下さったそうだ。
この場をお借りして、ありがとうございます!
そして、お手紙をくださった読者のみなさん、ありがとうございます!
『ポレポレ日記(ダイアリー)』シリーズの、
次の巻、第4弾の内容についての打ち合わせも無事に終え、
「それじゃあ、そろそろ」とTさんが立ち上がると、
ソファで寝ていたハチが、再び起き出した。
玄関に向かうTさんに、必死にしっぽを振って
「帰らないで」アピールをするも虚しく、
Tさんは靴を履き、玄関のドアを開ける。
お礼の挨拶をして、ふとハチを探すと・・・
「去り際は見たくないんだ・・・」とばかりに
肩を落として廊下をトボトボ歩いていく、しょぼんとした後ろ姿に、
二人で大笑いしてしまった。
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