ボクだって泣きたいよー! vol.28 ~トラウマはこうしてできる~

作/チームCOL

「ダメ! 手を出したらかまれる
 ってママが言ってたよ」


女の子のダメだしに、男の子は、
ドキッとしたように手を引っ込めた。


ハァ、ハァ……。
みーちゃん、とにかくはやく…
はやく、もどってきてぇ~。


ボクの死にそうな思いが通じたのか、
その瞬間、みーちゃんの走ってくる
足音が聞こえた。


「あれー、はっちゃん!
 ごめん、ごめん!」


みーちゃんは、子どもたちの
あいだをわりこんで入ってくると、
しゃがんでボクを抱き寄せた。


たすかった……。
もう、ボク胸がはちきれそう。


「ごめんねぇ、ワンちゃん
 こわがってるから、
 やさしくしてあげてね~」


みーちゃんが言うと、


「さわってもいいですか?」


さっきダメだしをした女の子が
みんなの代表のように
みーちゃんに聞いた。


「うーん、どうかな~。
 はっちゃん、大丈夫?」


やだよー。
ボク、帰る!!

みーちゃんにおしりを向けると、
ボクは体をふせたまま、
全身でリードを引っぱった。


「ワンちゃん、イヤがってる……」


ガッカリしている女の子の声が
聞こえてきて、ボクはなんだか
もうしわけない気持ちになった。


けど、、、
ボクだって、泣きたいんだよ~!


「ごめんね。きょうは、ちょっと
 ダメみたい。また今度ね!」


みーちゃんはそう言うと、
ボクをその場から連れ出した。


ボクは、みーちゃんの持つリードを
今までにないくらい引っぱって、
いちもくさんに家へと走った。



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