柴犬ハチのお友だち

From 倉橋燿子

ハチは、1月に12歳になったばかり。
生後6ヶ月で、我が家にやってきた。


あれから、11年半。


ハチは、生後まもなく千葉の乗馬クラブに
預けられ、そのまま引き取り手が来ないまま、
たくさんの馬や犬や猫たちと一緒に、
過ごしていたそうだ。


乗馬クラブというと、大自然の中で広々とした
大地でのびのび育ったように感じるけど、
新しい家族にすぐに慣れるようにと、普段は
ゲージに入れられていて、散歩のときだけ
外に出してもらっていたみたい。
しかも、ハチは乗馬クラブのワンちゃんたちに
イジメられていたらしい。

そのせいか、性格が尋常じゃなくおとなしい。
我が家に来た当初は、はしゃぐこともなく
常に静かで、吠えることも一切なかった。


初めてのお散歩は、近所にある公園のグラウンド。

そこで、友だちになったのが、真っ黒い毛に
覆われた、2歳年上のお姉さんの“ハルちゃん”。

他にも、たくさんのワンちゃんと友だちになって、
ハチもすっかりこの土地に馴染んできた。

何度も公園を脱走して、道路に出ちゃう
こともあったし、公園の隣にある敷地内に
入りこんだこともある。



それほど、ハチは“やんちゃ”になった。

ネコにも吠えるようになって、3歳の時
初めてハチの吠える声を聞いた。
予想と反して、けっこう野太い声だった!



年月と共に、グラウンドにくるワンちゃんの数も
だんだんと減ってきて、今は仲良しのウィルくん
モモちゃん、ハルちゃんの3匹だけ。

ハチは、家の中でトイレをしないので、
雨の日も雪の日も、突風の日も嵐の日も、
毎日欠かさずお散歩に行く。

同じように、毎日欠かさずグラウンドに来るのが
最初に友だちになった、ハルちゃん。

ハチが我が家に来てから11年半、ほぼ毎日
ハチは、ハルちゃんと会っていたことになる。


ハチは、ハルちゃんを見つけると決まって
ハルちゃんの周りをぐるぐる回って、
顔を寄せて挨拶する。
一緒にいるだけでもうれしいみたい。


そのハルちゃんが、一週間前に亡くなった。
14歳だった。


グラウンドに行くと、
飼い主のおじさんがハルちゃんの首輪だけを
持って、一人でやってきた。
「毎日来てたから、つい来ちゃうんだよなー」
と、いつものようにハチにオヤツをくれる。

ハチは食べ終わると、グラウンドの周りを
ウロウロ。植え込みの方を見て目をこらす。
そこは、ハルちゃんがよくいた場所。


どうやら、ハチはハルちゃんを
探していたみたいだった。



ハチとの時間も、
ちょっとずつ残り少なくなってきている。

私だって、いつお別れの時が
くるかは分からない。


だから、やっぱり、
一日を、精一杯大切に過ごさなきゃね!


思わず、ハチをギューッと抱きしめると、
嫌そうに「フン、フン!」と鼻を鳴らされた。