断れない性分

From 倉橋燿子

「今日は来てくれて、ありがとね」


最近、友人がフェイシャルエステサロンを
オープンさせた。
今日は、そのお祝いも兼ねて、
お客さんとして行ってみた。


友人が言うには、
とにかく肌にはビタミンAが大事らしい。
ビタミンAが不足すると
肌のコンディションが乱れ、
キメが荒くなったり、ハリ不足、くすみなど、
様々な肌トラブルが起こると聞いて驚いた。
そのビタミンAを、今日は外側から
十分に補給してもらった。


気持ちよかった~~♪

だけど、鏡を見てみたら……。


うーん、さほど変わらない気がする。
効果はすぐには出ないと思ってはいたけど、
やったそばからハリや潤いが蘇るんだ!
って期待して来ただけに、
ちょっと物足りない気がしてくる。


「近いうち、また来るね~」
お会計を済ませ、挨拶をすると、

「あっ、だったら回数券あるよ?」
すかさずビジネストークで返された。


友人の一言にギクッとする。
「通常だと一回七千円のところ、二回で
 一万二千円になるから、お得だと思うけど?」

そう言って友人は、私の反応を伺う。
でもなぁ……。回数券までは、ちょっと……。
そこまで熱心に通いたいわけじゃないし……。
そもそも、そんなに余裕もない。


「う~ん、そうだねぇ。どうしようかなぁ」
”どうしよう…”なんて
迷うまでもないのに、断りづらい。


悩んでいると、友人は無料で作れる
ポイントカードを勧めてきた。


「そうね! じゃあ、とりあえず今回は
 ポイントカードだけ作ってもらおうかな」


よかったー! 
うまい具合に回避できたかも!? 


「はい、どうぞ」

友人からポイントカードを渡される。
あー、これで無事に帰れる!


「また来るね! 
 今度、友だちも誘ってくるよ」

「え、だったら回数券あったほうが
 絶対お得だけど!?」


えっ? しまった! またこの流れ……?
もう~、なんで余計なこと
言っちゃったんだろう、バカバカ。


「ああ~~……。そうかぁ、そうだねぇ……」

そうだねぇ、とか言ってる場合じゃないよ~~。
いらないって、どうしてハッキリ
断れないんだろう…。


「次は、もう値段上がっちゃうし」

「そうね、じゃあ、お願いしよかなっ」


バカーーーーッ!!
バカバカバカーーーーーッ!!

自分の気持ちとは裏腹に、満面の笑みで答えた。
友人から回数券を手渡され、今度こそ店を出る。


は~ぁ……。
なぜだかものすごい高価なものを
買ったかのような罪悪感に襲われる。


でも、
最近仕事のスケジュールが立て込んでて、
肌も疲れてたし。
それに、やっぱり肌がツルツルしてない?
心なしか、首回りの凝りもほぐれた気がするし。

そうよ!
また行ってキレイになるんだし、いいよね!
うん! これは必要経費ってことでいいや!


買ってよかった理由を
散々自分に言い聞かせながら、
駅までの道をガシガシと歩いた。