赤いバンダナ vol.5 ~はっちゃんのトレードマーク~
作/チームCOL
「はっちゃん、お散歩に行こっか」
翌日ママは、はり切って
ボクに話しかけてきた。
部屋の隅ずみを
クンクンしていたボクは、
ドキッとして、ふり返る。
お散歩……。
きのうのことが思い出されて、
心臓がバクバクしてきたボクとは
反対に、ママはごきげんで
ニコニコしながら近づいてくる。
ボクは、ちょっぴりこわくなって、
テーブルの下に隠れた。
やだよー。外、こわいな。
行きたくないよ……。
「はっちゃん、おいで~」
ボクがジッとかたまっていると、
ママがもう一度ボクを呼ぶ。
そーっとイスのあいだから
顔を出すと、ママはボクの首に
ふわっと赤い布を巻き付けた。
うぅ……。
なんか、きゅうくつ。
ママに目でうったえてみたけど、
ぜんぜん気づいてもらえない。
「わぁ~。赤いバンダナが
よく似合うね、はっちゃん」
むしろ、喜んでる。
ママは、バンダナの結び目を直すと、
「うん、これでヨシ!」
と満足そうに言って、
ボクを抱きあげ玄関へ出た。
「さあ、はっちゃん。
記念すべき初めてのお散歩よ」
ママは、ボクを地面に降ろして
首に緑色のリードをつけると、
元気よく歩き出した。
ま、待って……。
やっぱりコンクリートは
ゴツゴツしてて、歩きにくい。
牧場のときの土がなつかしいな……。
ソロリソロリと歩いていると、
ボクの体よりも大きなタイヤが
ぐるぐるまわりながら、
目の前にせまってきた。
わぁ!
やっぱり、こわい。
四本の足をギュッとかたくして、
ボクは、その場にジッと固まった。
ママがリードを引っぱったけど、
ボクは体じゅうの力をぜんぶ使って、
抵抗しつづけた。
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